無口なご主人が一層口を閉ざすようになってしまって、
どうしていいかわからず悩んでいらっしゃるのですね。
がん罹患はご本人にとっては大きなショックでしょうから、
たとえ身内にでさえ、話したくなくなるものなのかもしれません。
私自身もそんな時期がありました。
妻は私を励まそうと声を掛けてくれたりするものの、
こちらはそれに笑顔で応じることができない。
そんな日々でした。
その後、妻はあまり多くを語らず、
黙ってそばにいてくれるようになりました。
そしてたまにこう言うのです。
「何か話したくなったら、話してくれればいいから」と。
つまり、私の主体性を重んじてくれるようになったんですね。
人はつい、「相手のために善かれと思って」
行動をしてしまいがちです。
ただし、本当に相手のためになっているかどうかは
本人でないと分かりませんし、
それは往々にして、自分本位になりがちです。
妻が私を励ましていたときも、
もしかしたら、その沈黙に耐えきれなくなって発言していたのかもしれません。
でもそれ以降は、ずっと沈黙に付き合ってくれるようになりました。
そして、たまに口を開く私に、「うん、うん」「そうだよね」と
相槌を打ってくれるようになりました。
そして、私にはその関わりだけで十分でした。
そばにいて、うなずいてくれる。
それだけで心地よく、心強かったのです。
(了)
回答者:花木裕介(一般社団法人がんチャレンジャー 代表理事)