Q6.父ががんになりました。主治医は、治療をやりきれば回復の見込みはあると言ってくれているのですが、本人は、辛い治療するくらいなら長生きしなくていいと言います。どのように関わっていけばいいでしょうか。(Bさん・男性・40代)


お父様ががんになられ、さぞお辛い状況かとお察しします。ただ、主治医の先生から希望の持てる言葉をいただいたということで、Bさんとしては治療に臨んでもらいたいと思っているわけですね。しかし、肝心のお父様が治療には後ろ向きでどうしたらいいのかと……。


近年、がん治療は日進月歩と言われ、痛みや負担が過去に比べて少なくなってきていると言われています。しかし、それでも、例えば抗がん剤などは、「辛い」「苦しい」というイメージを持たれがちです。お父様もきっとそのようなお気持ちから、治療に後ろ向きなのかもしれません。


では、もしBさんだったらどうでしょうか。想像してみてください。万一ご自身がお父様と同じ年齢になったときにがんと宣告されがん治療臨まなければならなくなったとしたら、と。


「……そうだよな。もし自分がその立場だとしても、辛い治療はやはりやりたくないと思うだろうな」。もしそういう気持ちを抱いたとしたら、その思いでお父様に接してみていただいたらどうでしょうか。お父様にしても、本当に「長生きしたくない」わけではないと私は思います。そのくらい、「辛い治療を受けたくない」だけなのだと思います。


私自身、中咽頭がんの治療のため、放射線治療をしていたときのこと。35回受けなければならない治療だったのですが、途中から味覚がなくなり、さらには口の中の粘膜が焼けただれてきて、激痛から食事も水分も取れなくなる日々が一カ月くらい続きました。


このとき妻にこう漏らしました。「もう治らなくてもいいから止めたい」と。そのとき妻は、「そんなに辛いなら、止めてもいいよ。一緒に先生に言いに行こう」と言ってくれました。「あきらめるなでも、「頑張ろうでもなく、「止めてもいいよ」と。まだ幼子もいましたので、止めていいはずありませんでした。それでも、私の辛さに寄り添ってくれたことが分かったとき、私は「気持ちを理解してくれる家族のためにも頑張らなくては…」と逆に励まされました。


Bさんご自身もお辛いお立場かとは思いますが、まずはぜひお父様のお気持ちに寄り添おうとしていただけたらと思います。


(了)


回答者:花木裕介(一般社団法人がんチャレンジャー 代表理事)